231110_時間の違い

明日のため、未来のために、いまを手段化したり、犠牲にしたりしているかもしれない!と感じ始めたのは、コスタリカに行ったことがきっかけの一つだ。いい学校、いい就職、いい老後のためには、いまを楽しんでいる暇などない、みたいな空気感は、自分の場合、他の国の生活と相対化して初めて感じることができた。ゴールに向かって徹底的に無駄をそぎ落とし、いまを犠牲にして効率性を上げる生活は、当事者になってしまうと疑うこともなければ、気付いた時にそこから脱する余力さえもない。
コスタリカでは、働いている人の場合、8時ごろに家を出て、15時半~16時前には家に帰り、毎日コーヒーを飲みながらパンを食べるのが一般的。エリートの家庭はまた別だと思うが、せかせかした様子の人は少なければ夜まで働く人も少ない。

同じ敷地内の隣に住んでいたホストマザーの弟は当時18歳で、高校を卒業しており、元気はつらつ友達沢山なのだが、ほぼ家にいてサッカーを見ていて、週に3回くらいはバイトに行っていた。18歳にして所属がバイト先のみの生活だ。ホストマザーの別の弟(25歳くらい)は、毎日15時とかに帰ってきて、その後は一生絵を描いていた。ホストいとこは18歳で、元気はつらつで友達も沢山いるしパーティにもめちゃ行くけどだけれども、ほぼずっと家にいた。何に所属しているのかよくわからない人が今思えばたくさんいた。当時は、自分の事にいっぱいいっぱいでよくわからなかったが、次コスタリカに行った時は何をしていたのか答え合わせをしたい。完全に時間に関する考え方が違うと思っている。モラトリアムに怯え、せかせか所属先を見つけて、朝から晩まで働くような生活とは異なる生活は推奨されない空気感がある。せかせかしないように"したい"人と"そうするしかない"人がいるのだとはもちろん思う。

コスタリカは本格的な社会保障制度が整備され始めた1940年代以降、社会民主主義を目指す国民解放党が政権につくことが多く、医療や教育などの社会保障の充実と貧困の撲滅を目指してきたようだ。実際、ラテンアメリカの中では貧困率も低く、平均寿命も長い。そういえば新築の家に住む人も珍しいし、新車を買っている人も珍しい。見栄への投資や未来への投資を最小限にして、瞬間を楽しむ術を皆持っているし、その基盤を国が作っている。あと純粋に暖かい場所なので気持ちもせかせかしない。